ユビー生成AIインタビュー200〜499床西日本

公益財団法人操風会 岡山旭東病院

論文で裏付けた「薬剤師本来の仕事」への回帰。岡山旭東病院 薬剤部14名のお薬手帳×AI活用記

公開日:2026/8/4

論文で裏付けた「薬剤師本来の仕事」への回帰。岡山旭東病院 薬剤部14名のお薬手帳×AI活用記

お薬手帳の画像をAIで読み取り、術前休薬確認の入力時間を約半分に短縮。論文発表まで至った岡山旭東病院 薬剤部14名が、ユビー生成AIを入力支援ツールとして活用し、患者と向き合う本来の仕事を取り戻した実践をご紹介します。

岡山旭東病院(岡山市)は、ユビー生成AIを2024年7月に導入し、薬剤部など病院全体で積極的な活用を進めています。術前休薬確認指導記録へのAI活用は論文(※)として発表されています。今回は、CIO・榊原祥裕氏と薬剤師・香川陽人氏に、導入の経緯から具体的なユースケース、組織への浸透のコツまで詳しくお伺いしました。

※「薬剤部門における文書作成業務への生成AI導入および生成AI活用による業務効率化の検討」(日本病院薬剤師会雑誌 2026年6月掲載)https://mol.medicalonline.jp/newbunken?GoodsID=dg4hppha/2026/006201/008&name=0059-0064j

導入前の課題
  • 手術・入院件数の増加で、記録業務の負担が増大していた
  • お薬手帳の薬剤情報をすべて手入力しており非効率だった
  • メモ取りに集中するあまり、患者と向き合えていなかった
導入の決め手
  • 増加する記録業務に、AIによる省力化が直接応えられると判断
  • 生成AI普及への早期対応が、病院の競争力になると見込んだ
  • 紹介状・サマリー作成など、具体的な活用イメージが持てた
導入後の結果
  • 術前休薬確認の入力時間が、多剤処方患者で約半分に短縮
  • 取り組みを論文にまとめ、今秋の医療薬学会年会で登壇予定
  • 音声録音の活用で、患者の顔を見ながら面談できるように

経営会議で即決、翌日にはDX推進を表明

「病院の生き残りにはDXしかない」と判断した理由

──ユビー生成AIを導入した経緯を教えてください。

2024年5月、ユビーの担当者からベータ版の話を聞いた翌日には経営会議を開き、導入を即座に決めました。これからの病院の生き残りにはDXしかない。生成AIが大きな鍵になると判断し、早く慣れた方がいいと考えました。 2021年にIT推進センターを立ち上げ、DX推進を病院方針として掲げてきた実績がありました。そのため経営層から現場への合意形成もスムーズで、大きな抵抗もなく進めることができました。 導入初期には看護師・事務・薬剤師など全職種から約30名を集めた検証チームを結成し、各自が現場の課題を持ち寄りながらプロンプトを作成しました。(榊原氏)

榊原 祥裕 氏

術前休薬確認の記録時間が半減

薬剤部14名が論文で証明したAI活用の実際

──薬剤部では、具体的にどのような業務にAIを活用していますか?

手術を予定している入院患者さんのお薬手帳をスキャンし、その画像をユビー生成AIに貼り付けてプロンプトを実行します。AIが薬剤情報を読み取り、電子カルテへの転記に適した形式で出力してくれます。薬剤師がその内容を手帳と照合・確認したうえで電子カルテに入力するという流れです。 以前は薬局や医療機関が発行するシールの内容を1行ずつ手入力していました。多剤服用の高齢患者さんほど入力の負担が大きく、AI活用後は薬の種類が多い患者さんでの入力時間が約半分になっています。この取り組みの成果を取りまとめ論文としても発表いたしました。 手術件数や入院患者数が増えるなかで記録業務の負担は増加していましたが、その課題に直接応えられる活用方法でした。(香川氏)

術前休薬確認の入力時間短縮を示す図

「文字起こして」から始まったプロンプト改良

試行錯誤を経て生まれた、再現できる運用モデル

──現在の使い方が完成するまでに、どのような試行錯誤がありましたか?

最初のプロンプトは「文字起こしをしてください」というシンプルな一文でした。AIがお薬手帳の情報を読み取れることはすぐに確認できましたが、実際の運用では薬剤情報だけが必要です。どうすれば薬の部分だけを抽出できるか、どの形式で出力させると転記しやすいか——そういった問いから試行錯誤が始まりました。 プロンプトを作っては結果を見て、また作り直す。その繰り返しの末に、出力フォーマット例をプロンプトに組み込む現在のスタイルにたどり着きました。論文発表後も改良は続けており、院内の術前中止薬リストをプロンプトに組み込む応用も進行中です。 ユビー生成AIの活用が進んだ今は、プロンプトは1から作る必要はありません。他の部署や施設のものを参考に、薬剤業務に合わせて少し変えるだけで十分使えます。私自身もプロンプトの専門家ではありませんが、問題なく運用できています。(香川氏)

データと勉強会で「使う雰囲気」をつくった

部内浸透のために薬剤師がとった一手

──スタッフへの浸透はスムーズでしたか?どのような工夫をされましたか?

検証チームのメンバーは生成AIへの関心が高く、抵抗感はほとんどありませんでした。ただ、全職員へのアンケートを取ると、チームに関わっていない職員から「AIで大丈夫なのか」という安全性への不安の声も一定数ありました。まだ生成AIが世の中に出始めたばかりの時期でしたので、そういった不安は自然なことだと受け止めています。(榊原氏) プロンプトが完成した後も、すぐに全員が使い始めたわけではありませんでした。なかなか使う流れにならなかった時期もあります。そこで部内の勉強会を開催し、論文に基づく時間短縮のデータなどを示しながら「これだけ短縮されるので、ぜひ使いましょう」と呼びかけ、使い方の講座も実施しました。プレゼンだけで大きく反応が変わるわけではありませんでしたが、一人ひとりが実際に触れることで肌で感じることが大切でした。今では通常の業務として自然に組み込まれています。(香川氏)

患者の顔を見ながら話せるようになった

音声録音でメモ取りから解放された面談の景色

──AI活用を通じて、業務の「質」にはどんな変化がありましたか?

時間短縮の効果が大きいのはもちろんですが、業務が安定したという点も大きいです。AIが支援してくれる部分が増えた分、薬剤師が各確認や情報収集により集中できるようになりました。 術前休薬確認の指導記録では、今は音声認識の活用も試みています。患者さんとの面談を録音し、会話の流れからアレルギー情報・入院理由・手術内容などを自動で吸い上げられるようになりつつあります。以前はメモを取りながら話を聞く形が一般的でしたが、今は患者さんの顔を見ながら会話に集中できるようになりました。私たちの仕事は電子カルテへの入力ではありません。本来注力すべき業務に集中できる環境が少しずつ整ってきています。(香川氏)

香川 陽人 氏

AIに「答えを求めない」、まず1つから始める

導入を検討する施設へのメッセージ

──薬剤部での生成AI導入を検討している施設へ、アドバイスをお願いします。

AIに答えを求めるのではなく、下書きや入力支援のサポートツールとして捉えることが大切だと思っています。医療的な判断を任せようとすると使いにくく感じてしまいますが、書類作成や記録の補助として位置づけることで、現場に自然に溶け込んでいきます。AIの出力は必ず薬剤師が手帳と照合して確認することを徹底しており、最終確認は常に人が行うという原則は今も変わりません。 また、最初から大きな業務改善を目指す必要はありません。まず1つの業務、1つのテンプレートから始め、利便性を肌で感じる成功体験を少しずつ積み重ねることが、組織全体への浸透につながります。専門知識がなくても、既存のプロンプト例を少し変えるだけで十分使えます。ぜひ一歩踏み出してみてほしいと思います。(香川氏)

お話を伺ったのは…

  • 榊原 祥裕 氏IT推進部門 CIO / 情報システム室 室長 / 法人本部 IT戦略室長 / 上級医療情報技師
  • 香川 陽人 氏薬剤部 副主任
榊原 祥裕 氏(IT推進部門 CIO)、香川 陽人 氏(薬剤部 副主任)

病院紹介

公益財団法人操風会 岡山旭東病院

公益財団法人操風会 岡山旭東病院

岡山県岡山市に位置する214床の病院。独立組織「IT推進センター」が主導し、管理職・ITスキル不問の12職種30名の推進チームを起点に全職員展開を達成。文書作成時間を最大75%削減し、81.6%の職員が「業務に役立つ」と評価している。

所在地
岡山県岡山市中区倉田567-1
設立
昭和58年
代表者
院長 吉岡 純二
病床数
214床(一般172床、HCU12床、地域包括30床)
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