松阪中央総合病院
「タスクシフトからワーク・リノベーションへ」松阪中央総合病院がユビー生成AIで挑む、人口減少下での地域医療を守るための人材育成
公開日:2026/5/13

三重県厚生連の拠点病院として「ワーク・リノベーション」を推進する松阪中央総合病院。「ファーストペンギン」となりユビー生成AIを導入し、看護師の退院サマリー作成から医師の紹介状要約まで多職種での活用が運用開始3ヶ月で広がりました。
三重県の拠点病院として地域医療を支える松阪中央総合病院。将来的な人口減少に伴う深刻な人材不足を見据え、地域医療の未来を守るべくAI活用によるDXを推進。現場の課題を起点としたボトムアップ型アプローチと「ワーク・リノベーション」の実践により、事務作業の総量を削減し、医療従事者が本来の専門業務である「患者様と向き合う時間」を最大化する取り組みを実現した。いかにして現場の自発性を引き出し、成果を創出したのか。推進の鍵を握る外科部長と情報システム担当にお話を伺いました。
- ●急速な人口減少に伴う将来的な医療人材不足が不可避であり、現場スタッフが疲弊せず「医療の未来に希望」を持てる環境整備が必要であった。
- ●DXの必要性は感じつつも、具体的なきっかけがない「飲み会の口約束」のような膠着状態にあり、拠点病院として率先して動く「ファーストペンギン」の役割が求められていた。
- ●従来の「タスクシフト」では医師の仕事を他職種に押し付ける形になりがちで、業務構造そのものを再構築する抜本的な解決策が欠如していた。
- ●VPNを活用したセキュアなクローズド環境により、オンプレミス環境の病院でも機微情報を安全に扱えるガバナンスが確立できる点を評価した。
- ●ユーザー自身がプロンプトを柔軟に構築できる点。医療業務における多様なユースケースへの適用が可能となり、議事録作成といった医療業務外の領域でも有用である。
- ●定額制でトークン生成に上限がない点も選定の決め手。従量課金制ではコストを意識して試行錯誤が制限されるが、定額制は職員がコストを気にせず自由に活用できる。
- ●導入3ヶ月で全方位への横展開が進みつつある。レセプト業務や退院サマリー作成において、AIを下書きに活用する「ワーク・リノベーション」が定着し始めた。
- ●現場主導のワーキンググループ(WG)から、MSW(ソーシャルワーカー)の相談業務に特化した専用プロンプトの検討など、多職種による自律的な活用案が創出されている。
- ●事務作業の効率化によりスタッフの心と時間に「ゆとり」が生まれ、患者のベッドサイドに足を運び、笑顔で向き合う「人間にしかできない業務」への注力時間が拡大した。
ユビー生成AIの導入背景・目的
人口減少社会において拠点病院がファーストペンギンとして未来への希望を示す重要性
──三重県厚生連が推進する「業務軽減プロジェクト」の一環として導入されましたが、地域全体をデジタル化していく中で、貴院にはどのような役割が期待されていたのでしょうか。
三重県は人口減少が急速に進んでおり、医療現場における将来的な人材不足は避けて通れない課題です。このプロジェクトを通して最も伝えたかったのは、職員たちに「医療の未来は決して暗いものではない」と感じてもらうことでした。拠点病院として当院に求められているのは、周囲の出方をうかがうことではなく、「ファーストペンギン」となり、未来への希望となるツールを率先して使いこなすことです。その成功体験を地域へ波及させていくことこそが、当院に課せられた役割です。
──「未来を見据えたDX」という位置づけですが、当時の病院全体のデジタル化への温度感はいかがでしたか?
現場のスタッフも「これからの医療にはAIやIT化が必要だ」という思いを共通して抱いていました。ただ、例えるなら「今度みんなで飲みに行きましょう」という口約束が、いつまでも実現しない状態に近いものでした。だからこそ、具体的に指定する「言い出しっぺ」になる必要がありました。「このツールを使って、業務を再構築する『ワーク・リノベーション』を始めよう」と、具体的なきっかけを提示したに過ぎないのです。そのきっかけさえあれば、現場は自律的に動き出してくれました。
──現場の抵抗感を払拭し、「業務を適正化するもの」だと認識させるために意識したことはありますか。
強く意識してもらうよう伝えたのは、「私たちが目指しているのは単なるタスクシフトではなく、『ワーク・リノベーション』である」という点です。AIという新しい武器を使い、業務構造そのものをゼロから組み替える「ワーク・リノベーション」を推進しようと呼びかけました。「他職種の同僚が楽になるためには、どのような活用方法があるか」を互いに模索することで、新しいツールへの心理的な壁も自然と解消されていくものだと考えています。
ユビー生成AI導入の決め手
セキュリティの懸念を払拭し定額制による自由な試行錯誤を可能にする環境整備
──数ある生成AIソリューションの中で、「ユビー生成AI」を選定された決め手は何だったのでしょうか。
最大の決め手は、ユーザー自身がプロンプトを柔軟に構築・改善できる「カスタマイズ性の高さ」です。また、VPNを活用したセキュアなクローズド環境での運用が可能であること。以前から職員による非公式な自主的なAI利用が見受けられ、シャドーIT化のリスク排除が喫緊の課題となっていたのです。定額制で生成に上限がないことも非常に大きな理由でした。
──コスト面や決裁のプロセスにおいて重視された点はありますか。
定額制でトークン生成に上限がない点は、コスト面で非常に大きな意味を持ちます。従量課金制では職員がコストを気にして試行錯誤できなくなりますが、定額制であれば気兼ねなく使い込めます。決裁については、厚生連の理事長・院長の支持を得たことで、事業計画外でも迅速に導入を進めることができました。情報システム担当には「技術的な安全性はあなたたちに担保してもらう。医療的な最終責任は私が取る」と明言し、チームとして取り組む体制を整えました。
生成AIの導入効果
全方位への横展開によって創出された職種を超えた利他の連鎖と自発的な改善
──運用開始から約3ヶ月が経過しましたが、現時点でどのようなユースケースが生まれていますか。
運用開始からわずか3ヶ月ですが、多岐にわたる部署で実を結びつつあります。看護師は退院サマリーの作成や会議録の要約に活用し、医師は紹介状の要約支援によって患者さんと向き合う時間を取り戻すことができました。薬剤部においても「薬剤情報サマリー」の作成に活用しています。特定の診療科に限定せず「使えるところは全部」という全方位の姿勢を貫いたからこそ、職種を超えた「利他の連鎖」が生まれました。
──現場の自発性を引き出すために、工夫されたことはありますか。
「現場へ足で通うこと」を徹底しました。管理者画面のログから利用頻度の高いスタッフを確認し、そのもとへ直接足を運んで「どんな使い方をしているの? ぜひ教えてほしい」とアナログに教えを乞うコミュニケーションを継続しました。現場の業務解像度が最も高いのは、実際に日々業務を回している看護師や事務員たちです。
今後、ユビー生成AIに期待すること
医療従事者が人間にしかできない本質的な仕事に注力できる喜びを噛み締められる環境へ
──今後、ユビー生成AIを通じてどのような未来を実現したいと考えていますか。
最終的なゴールは、医療従事者が「人間にしかできない仕事」に集中し、働く喜びを実感できる病院を築くことです。今後は、当院で蓄積した「ワーク・リノベーション」の知見を、厚生連の他病院や地域全体へ惜しみなく共有し、地域医療における働き方の底上げを図りたいと考えています。
──同様にボトムアップでのDXを目指す他病院のリーダーへメッセージをお願いします。
AIを「絶対的な正義」として現場に押し付けるのではなく、「謙虚なコマンダー」として現場を信じ、裁量を委ねることが大切だと思います。現場のスタッフの方が業務解像度は高い。最終責任だけはリーダーが引き受けながら、知恵は現場から借りる──その姿勢を持つことで、自律的な活用が広がっていくのではないでしょうか。
お話を伺ったのは…
- 小林 基之 氏外科部長 / DX推進委員会 リーダー
- 和田 幸太 氏電算室 情報システム係長

病院紹介
松阪中央総合病院

「断らない救急」と「高度ながん診療」を軸に、松阪・東紀州地域の中核を担う。地域の期待に応える安全で安心な医療の提供に加え、生成AIによる「ワーク・リノベーション」を推進。事務作業の効率化で患者様と向き合う時間を最大化し、持続可能な地域医療体制の構築に先駆的に挑戦している。
- 所在地
- 三重県松阪市川井町字小望102
- 設立
- 昭和36年
- 代表者
- 病院長 田端 正巳
- 病床数
- 一般440床
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