ユビー生成AI成果事例200〜499床九州・沖縄

社会医療法人聖峰会 田主丸中央病院

仕組みで現場に根付かせた生成AI活用|地域中核病院のDX実装

公開日:2026/3/22

仕組みで現場に根付かせた生成AI活用|地域中核病院のDX実装

福岡県久留米市の地域中核病院が、生成AI・Excel VBA・RPAを組み合わせた独自の仕組みを構築。看護サマリー完成日数を6分の1に短縮し、算定漏れチェックを月10時間から15分へ圧縮した。

福岡県久留米市の343床の地域中核病院が、生成AI・Excel VBA・RPAを組み合わせた独自の仕組みを構築。看護サマリー完成日数を6分の1に短縮し、算定漏れチェックを月10時間から15分へ圧縮した。

導入の背景・目的
  • 看護サマリー未着手の山積み解消とAIの現場定着
  • 追加コストゼロで6ステップを1クリックに集約
  • モジュール構造で病院全体へ横展開できる基盤の構築
効果
  • 看護サマリー完成日数を6分の1に短縮
  • 算定漏れチェックを月10時間から15分へ圧縮
  • 導入初月で4件の算定漏れを発見し収益を確保

最大集団・最大レバレッジを狙った戦略的転換

2024年6月のユビー生成AI導入後、田主丸中央病院では「いかにAIを現場文化として定着させるか」を最大の課題に設定した。その答えとして着目したのが看護サマリー業務だ。看護師は病院最大の職種集団であり、彼らが成功体験を得ることが他職種へ伝播する「着火剤」になると考えた。また看護サマリーは思考負荷が高く未着手が山積みになりやすい業務であるため、AIの文書生成能力の恩恵が最も大きい領域でもある。「技術の最適化ではなく、人間の変化をデザインする」という視点がこの戦略的転換の核心にある。病棟の未完成リストという具体的な課題に焦点を当てたことで、改善の優先順位と効果測定の軸が明確になった。

追加コストゼロ、6ステップを1クリックへ

電子カルテの標準アプリでは、AIにデータを渡すまでに6ステップの手作業が必要で、多忙な現場での活用を阻む最大の障壁となっていた。この課題に対し、ベンダーとの守秘契約のもとDB構造を開示してもらい、全端末に既に導入済みのExcel VBAからSQLで電子カルテのデータベースに直接アクセスする独自の仕組みを構築した。これにより6ステップを「1クリック」に集約し、追加コストゼロで実現。さらにデータ形式をCSVからJSON形式に変換することで、AIのハルシネーション(誤回答)を強力に抑制し、出力品質を大幅に向上させた。身近なツールの組み合わせで「独自の高速道路」を建設するという逆転の発想が、現場の壁を突破した。

モジュール構造による病院全体への横展開

看護サマリーで確立した仕組みを一過性の個別解決で終わらせないために、「データ」「プロンプト(指示書)」「背景情報」の3要素を分離したモジュール構造で設計した。この構造により、看護サマリー向けに開発した基盤を医師サマリー・紹介状・リハビリ記録へ「着せ替え」感覚で転用することが可能となった。担当者がゼロから開発することなく、既存の仕組みをレゴブロックのように組み合わせて多様な業務ニーズに対応できるため、DX展開のスピードが加速した。個別最適ではなく再利用可能な「基盤」として設計したことが、病院全体へのAI活用拡大を支える重要な決断となった。

AI×VBA×RPAの三位一体による業務自動化

データ連携の仕組みが確立したことで、次のフェーズとして生成AIとRPAの連携を着想した。「精神科疾患患者等受入加算」の算定漏れチェックを対象に、VBA・SQLで救急看護記録を抽出し、生成AIが精神疾患の既往などを自動判定、RPAがこれらを毎日自動実行してリストを作成する三位一体の仕組みを構築した。その結果、医事課職員が月10時間かけていた目視確認業務が、15分の最終チェックへと圧縮された。さらに導入初月で4件の算定漏れを発見し、適正な診療報酬収益の確保にも直結した。「曖昧さを減らし、仕組みで回す」という設計思想が、人間とAIの最適なタスクシェアを実現している。

AIは仕事を奪わない本来の仕事を取り戻す技術

今回のDXプロジェクト全体を、外科医・診療部長・医療情報部長として臨床と設計の両面から主導した野田祐司副院長が、一貫して伝えるメッセージがある。「AIは人間の仕事を奪うのではなく、人間が本来すべき仕事を取り戻すための技術である」。看護師が本来向き合うべきは、患者一人ひとりへのケアであるはずだ。しかし現実には、サマリー作成や書類業務に追われ、その時間が削られてきた。生成AIが「書く負担」を引き受けることで、看護師は患者と向き合う時間を取り戻す。これは医療における「タスクシフト」であり、人間とAIの間でも成立する。AIやRPAが担える定型業務はAIに任せ、人間は人間にしかできない判断・共感・創造へと回帰する。AIの導入は、職員の役割を奪う変化ではなく、職員が本来発揮すべき価値を解放する変化なのである。

病院紹介

社会医療法人聖峰会 田主丸中央病院

社会医療法人聖峰会 田主丸中央病院

福岡県久留米市に位置する地域中核病院。生成AI・Excel VBA・RPAを組み合わせた独自の仕組みを構築し、看護サマリー完成日数を6分の1に短縮。「技術の最適化ではなく、人間の変化をデザインする」という哲学のもと、医療現場へのAI定着と業務効率化を同時に推進している。

所在地
福岡県久留米市田主丸町益生田892
設立
昭和29年
代表者
理事長・院長 鬼塚 一郎
病床数
333床(一般病床166床、精神科病床48床、療養病床84床)
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