武田病院グループ
DPCコーディングのAIサジェストで年間約4,066万円の収益増加
公開日:2026/3/22

DXへの抵抗感を乗り越え、ユビー生成AIとDPCサポーターを導入。多職種カンファレンスの記録業務を1症例3分に短縮し、最適なDPCコードのAIサジェストによる収益増を実現。AIが生み出した時間を患者ケアに充てる。
DXへの抵抗感を乗り越え、ユビー生成AIとDPCサポーターを導入。多職種カンファレンスの記録業務を1症例3分に短縮し、最適なDPCコードのAIサジェストによる収益増を実現。AIが生み出した時間を患者ケアに充てる。
- ●ツールを入れても使われない現状維持バイアスとDXへの抵抗感
- ●DX推進を阻む「コスト」「人材」「効果の不確実性」という3つの壁
- ●診療録レビュー不足に伴う過小申請と収益機会の損失
- ●AI文字起こし・要約で記録業務が3分に大幅短縮
- ●DPC退院時コーディング業務対応工数50%減の効果を確認
- ●最適なDPCコードのサジェストで年間4,066万円の収益改善見込み
DX化を阻む「これまで通りでいい」という現場の壁
武田病院グループでは、経営層主導でDX化を推進してきたが、初期段階では大きな壁に直面していた。単に紙をPDF化したり、会議をオンライン化したりするだけでは本質的なDXとは言えず、デジタル技術でビジネスモデルや働き方を変えることの重要性を浸透させる必要があった。しかし、現場からは「すぐに効果が出ない」「対応できる職員がいない」「コストがかかる」といった懸念に加え、「なぜこれまで通りじゃダメなのか」という強い抵抗感があがっていた。実際に音声入力やAI問診を先行導入した際も、「手で入力した方が早い」といった声や、医師間での温度差も生じるなど、ツールの導入だけでは現場の「行動変容」が起きないという課題を抱えていた。
現場の看護師が主導する生成AIの「プロンプト工夫」
こうした現状を打破する契機となったのが、2023年末から検討を開始した「ユビー生成AI」の導入である。同グループでは看護部の日勤者全員にiPhoneを配布し、多職種カンファレンスの音声を録音してAIによる文字起こしと要約を自動化する取り組みを開始した。特筆すべきは、情報システム部が主導するのではなく、現場の看護師たちが自発的に活用を推進した点である。現場のスタッフ自らが「どうすれば誤字脱字をなくせるか」「どのようなプロンプトが最適か」を試行錯誤しながら自由にシステムを構築し、現場のニーズに直結した自律的なAI活用プロセスを確立していった。
多職種カンファレンスの記録業務を1症例「3分」へ劇的短縮
現場主導の生成AI活用は、記録業務に劇的な変化をもたらした。これまで多職種カンファレンスなどの記録系業務には1症例あたり10〜20分程度を要していたが、AIによる文字起こしと要約機能の活用により、わずか約3分へと大幅に短縮された。単なる時間短縮にとどまらず、モバイル端末のトーク機能を活用したチーム間のタイムリーな情報共有や、申し送り時間の削減といった定性的な効果も生まれている。さらに、業務状況が可視化されたことで適切な業務配分が可能となり、スタッフ間の協力意識や職場の雰囲気が向上するという予期せぬ相乗効果ももたらしている。
DPCサポーター導入で工数半減と約4,066万円の収益改善
現場の業務改善に続き、経営・管理部門においては「ユビーDPCサポーター」の活用が始まった。従来、診療情報管理士はDPCコーディング(臨床コーディング)業務に多大な時間を割かれており、推奨される監査に十分な時間をかけられない実態があった。その結果、診療録を起点としたレビューが不足し、過小申請による収益機会の損失が発生していた。こうした課題の解決に向け、グループ内の武田総合病院にてDPCサポーターの運用検証を実施した。AIが診療録とオーダー情報を基に最適なコードをサジェストすることで、退院時コーディング業務の対応工数が50%(1症例10分から5分)に半減する効果が確認された。さらにコーディング精度の向上により、年間約4,066万円の収益機会増加が見込まれるなど、経営に直結する絶大なインパクトを実証している。
「楽になって終わり」ではない。AIが生み出した時間の使い道
DXの推進により圧倒的な業務効率化を実現した同グループだが、経営層は「楽になって終わり」ではなく、そこからが新たなスタートであると位置づけている。AIによって生み出された「時間」を、患者に寄り添う「患者のケア」や「患者確保」といった、人でしかできない業務に充てることへシフトしている。また、AIを日常的に使い倒して「量をこなす」ことで、さらなる「質の向上」へと繋げていくというマインドの変革が現場に浸透しつつある。試行錯誤を重ねて高めた質で量をこなし、その過程でさらに質が磨かれるという好循環を生み出している。
働きがいのある環境づくりと、地域医療の「質」向上を目指して
今回のプロジェクトを主導したグループ本部医療情報管理部の大木達雄氏は、武田病院グループがDX化の先に見据えるのは、医療スタッフの働き方改革と、地域医療全体の質向上であると言う。AIを活用して働きやすく働きがいのある環境を整備することは、医療スタッフの離職防止や定着率の向上に直結するだけでなく、新たな人材、特に看護師の採用への好影響も期待されている。今後も継続的な技術革新と業務改善を推進し、患者中心の医療サービスの提供と働き方改革を高い次元で両立させることで、医療スタッフと患者の双方にとって理想的な医療環境の構築を目指していく。
病院紹介
武田病院グループ

武田病院グループは、「思いやりの心」を経営理念に掲げ、「Bridge The Gaps(患者さん、地域社会、すべての職員の間に信頼のかけ橋を)」を基本方針とする約5,600名の職員を擁する医療グループである。京都府内を中心に高度な緊急手術にも対応できる病院の他、予防・健診、急性期から回復期、慢性期、退院後のサポート、医療を軸に在宅・介護・福祉事業の展開まで、70以上の多様な施設の連携で隙間ない医療を提供する。
- 所在地
- 京都府
- 設立
- 昭和36年
- 代表者
- 理事長 武田 隆久
- 病床数
- 武田病院:384床、医仁会武田総合病院:490床、宇治武田病院:177床、十条武田リハビリテーション病院:182床など
医療現場の
業務効率化・経営改善
を支援します


