医療法人社団守成会 広瀬病院
黒字から赤字への転落を機に―― 問診も紹介状も算定もれチェックも。地域のかかりつけ病院に根付いた生成AI活用
公開日:2026/9/8
神奈川県相模原市で地域のかかりつけ病院として歩んできた広瀬病院。23年度に黒字から赤字へ転じたことを機に、さらなるDXの推進を目指してユビーを導入しました。理事長自らの実演を交えた地道な普及活動により、外来看護から医事課まで、現場に根差した活用が広がっています。
神奈川県相模原市で地域のかかりつけ病院として歩んできた広瀬病院。23年度に黒字から赤字へ転じたことを機に、さらなるDXの推進を目指してユビーを導入しました。理事長自らの実演を交えた地道な普及活動により、外来看護から医事課まで、現場に根差した活用が広がっています。
- ●23年度に黒字から赤字に転落。人を増やせない中、今いる職員がより効率的に働ける環境づくりが急務だった
- ●ITに不慣れな職員も多く、いきなり全業務への活用を求めても浸透しないという懸念があった
- ●紹介状作成や経過記録の要約など、医師事務作業補助の業務が慢性的に追いつかず、依頼自体が中断していた
- ●音声要約だけでなくファイル管理・ワークフローまで一気通貫でこなせる点を評価しユビーを選定
- ●「便利」を実感できる看護記録の要約から着手し、理事長自らの実演・動画・チャットスペースで段階的に普及
- ●外来看護(問診・救急隊対応)、医事課(サマリー・紹介状・訪問看護指示書)など、課ごとに具体的な活用シーンを拡大
- ●患者さんとの対面問診にかかる時間が従来の半分程度に短縮(外来看護)
- ●紹介状処理や訪問看護指示書作成が1件あたり15〜20分短縮(医事課)
- ●外来の算定もれ・加算もれチェックなど、経営インパクトに直結する領域への展開も進行中
「今いる職員がより効率的に働ける環境を」―― 黒字から赤字への転落が突きつけた課題
人を増やせない地域のかかりつけ病院だからこそ、効率化が急務だった

蛭間氏
──――蛭間様には、ユビーの生成AIを導入された経緯からお伺いします。どのような課題があって導入を検討されたのでしょうか?
蛭間氏(情報システム課)
医療を取り巻く環境が厳しくなる中で、当院も23年度に黒字から赤字になってしまいました。当院は病床数の限られた小規模病院ですので人を増やすことはなかなかできませんが、医療安全やサービスの質を落とすことはできません。そのため、今いる職員がより効率的に働ける環境を作ることが非常に重要だという課題がありました。
「要約するだけ」で終わらせない ―― ワークフローへの期待
音声要約だけでなく、ファイル管理・ワークフローまで一気通貫でこなせる点が決め手に
──――理事長から「AIを入れるぞ」と最初に聞いた時はどんな印象を持たれましたか?
蛭間氏(情報システム課)
私自身も情報収集のためにセミナー等に参加しており、24年12月に展示会でユビーさんの生成AIの説明を聞いていました。特に私の考えと一致したのが、DPCにおける加算もれのチェックを行っていた点です。日頃から外来の算定もれチェックをやりたいと考えていたので、ユビーさんと一緒に開発していければ実現できるのではないかと考え、導入したいという動きになりました。オンライン面談を申し込んで実際に使う人たちにも参加してもらい、最終的には理事長にも直接見てもらいました。
また、実際に他院での活用状況を見たいということで、ご紹介いただいた東京北部病院さんへ見学に行きました。救急隊からの電話を録音して要約している点が印象的でした。
──――院内の複数のAIツールをどのように使い分けていらっしゃいますか?
蛭間氏(情報システム課)
当院では現在3社の生成AIを導入しており、ユビーは後からの導入でした。先行して使っていた他社のAIサービスは、病棟のミーティングの音声議事録や、訪問診療などで活用しています。
ユビーは半年ほど後に入れたのですが、クラウド化の意味合いと、ファイル管理やワークフローが使える点が気に入っています。ユビーさんは画像認識やワークフローの手順で一辺に要約してくれるところが導入の決め手になりました。
ユビーでも音声入力ができますが、音声入力に特化した他社AIの方がレスポンスが早い印象があります。一方で、要約の精度を上げるために、プロンプトを自分で手直しすることができるのは、ユビーの強みです。「ここがおかしいな」と思ったら自分たちですぐに変更できる点が非常に優れています。そこを気に入っている先生は自分でプロンプトを作って活用しています。
「便利」を実感できる入口から広げる、現場浸透の工夫
理事長自らの実演、動画・チャットスペース・プロンプト集による支援体制
──――AIを導入して職員の皆さんに広めていくのは、最初は大変だったかと思いますが、いかがでしたか?
蛭間氏(情報システム課)
広めるために色々と工夫をしました。当初、看護師さんたちはITに精通しているわけではなかったので、最初からすべての業務に活用しようとするのは厳しいと考え、「これ便利だな」と思えるところから使ってもらおうと考えました。最初に取り組んだのは、患者さんとの会話を録音して要約する看護記録です。そこが一番助かると実感してもらえました。
また、理事長は新しいことを積極的に取り入れるタイプで、理事長講話で生成AIの導入を説明したり、医師や看護師のところへ直接出向いて「こうやってやるんだよ」と自ら実演して見せてくれた経緯もありました。
一部の職員から始めて便利な体験をしてもらい、不慣れな人にも使ってみようと思ってもらえる流れを作りました。
電子カルテのトップ画面の掲示板に関係資料やマニュアルを掲載してすぐに見られるようにしたり、録音から要約、電子カルテへの貼り付けまでの一連の流れを動画にして説明し、YouTubeにアップしていつでも見られるようにしました。現在はGoogle Workspaceのチャットスペースでもユビー専用のスペースを作り、情報を載せています。
活用推進の中で一番助かったのはユビーが用意してくれるプロンプトのサンプル集で、非常にありがたく利用しています。プロンプト作成が難しい人でもコピーして登録すれば使えますし、当院に合わせて修正するだけで済むため、作成時間が非常に短くなりました。
現場では、どの課でどう使われているか
外来看護・医事課、それぞれの「助かった」を聞く

左:熊澤氏、右:大林氏
──――外来ではどのような業務でユビーを使っていますか?
熊澤氏(外来看護師)
患者さんの問診票をカメラで撮影したものを文字起こししたり、患者さんと対面で問診した際の会話を録音して文字起こしをしています。また、救急隊から電話があった際にも通話を録音し、文字起こしして活用しています。
以前は問診票に患者さんの状態などをメモしながら聞き取り、現場(ナースステーション等)に戻ってからパソコンに手入力をしていたのですが、その手入力の手間が省けました。録音データがあるので、後から不要な部分を整理・削除するような形で活用しています。
体感としては、写真撮影からの取り込みや対面問診の録音については、以前の半分くらいの時間で済んでいる感覚があります。

──――医事課の業務ではどのように使われていますか?
大林氏(医事課)
医師事務作業補助の支援業務で主に使用しておりまして、具体的には入院の初期サマリー等で活用しています。入院から退院までを一括で読み込んでまとめて要約できるので、作業が非常に楽になったと聞いています。
私自身も診療情報提供書を取り込んでユビーにかけたり、お薬手帳の文字起こしを行ったりしています。お薬の量が多いとカタカナの入力ミスが大変なので、とても助かっています。高齢で入院期間が長い患者様が多く、他院からの転院時や帰省時の持参薬の確認などに活用しています。
──――医師事務作業補助として、どのような場面でユビーを活用していますか?
宇田川氏(医事課 診療支援班)
私は医師事務作業補助として、医師の代行で文書作成などの業務を行っています。その中でユビーを活用しているのは、紹介患者さんの紹介状(診療情報提供書)の処理です。紹介状をスキャンしてファイル化し、ユビーで要約・作成してもらったものを診療記録に貼り付けるという形で使っています。
以前から医師より「紹介状の内容を医師記録に入れてほしい」という依頼はあったのですが、業務が追いつかず中断してしまうこともありました。ユビーが導入されたことで作業効率が大幅に上がり、業務を定着させることができました。
紹介状は日にもよりますが、多い時は毎日10件ほど届きます。ユビーを使う前は、何ページもある紹介状だと1件につき15分〜30分、短くても20分程度はかかっていました。それがユビーを使うと、内容のチェック作業を含めても長くて10分程度で終わります。1件あたり15分〜20分程度は短縮できています。
また、訪問看護指示書を作成する際にも、経過記録の記載部分で医師記録からユビーを使って要約を作成しています。以前はカルテを読み込んで自分で要約していたので、そこでも15分ほど負担が軽減されています。

──――病棟ではどのように使われていますか?
髙橋氏(2階病棟)
2階病棟では、主に患者さんの入院時やIC(インフォームド・コンセント)を行う際に、ユビーを活用しています。
ICの場に専用のマイク(場合によってはスマートフォン)を設置し、医師と患者さんのご家族がお話しされている内容を録音・文字起こしします。上がってきた文字起こしテキストは、医師がカルテに入力する際の参考として見ながら入力したり、事前に看護師側がテキストを貼り付け、それを医師が確認する、といった形でカルテへの記録作業に役立てています。
──――ICでのユビー活用について、どのような効果に繋がっていますか?
髙橋氏(2階病棟)
導入前は、看護師がICにつきっきりで同席し、話している内容を必死に記憶しておく必要がありました。現在は録音が行われているため、場に同席しつつも、必要に応じて少し席を離れて他の看護業務を並行して進めることができるようになり、大幅な時間短縮が実現しています。
これまで手作業でICの対話内容をカルテに入力していた医師たちにとっても、ユビーによって作成されたテキストをコピー&ペーストして確認・修正するだけで済むようになり、入力に伴う作業負荷が大幅に軽減されています。
以前は「一度聞き逃してしまうと、何を話していたか分からなくなってしまう」という強い緊張感がありましたが、正確に記録される仕組みができたことで、看護師側の心理的・精神的な負担が本当に軽くなりました。
──――退院サマリーなどでの活用はいかがでしょうか?
井上氏(医事課)
私は主に、退院サマリーや訪問看護指示書を作成する業務においてユビーを活用しています。
導入前は、全てのカルテを見返して内容を抜き出し、過去の看護サマリーなども確認しながら、必要な要点を自身でかいつまんで文章を作成していました。現在は、カルテから必要な情報をコピー&ペーストしてツールに入力し、下書きを作成してもらう形で活用しています。
カルテを遡って自力で文章を組み立てる必要がなくなったため、体感として作業量が半分、あるいは半分以上に楽になったと感じています。以前は書類作成が溜まってしまうことが多かったのですが、ツールがある程度きれいな下書きを自動で作成してくれるため、作成スピードが飛躍的に向上しました。
「文章の締めくくり」に悩む時間の解消 自分で書類を作成していると「どうやって文章を締めくくろうか」と悩むことがよくありますが、ツールを使用すると素晴らしいほどきれいに文章を締めくくって出力してくれるため、非常に助かっています。
「算定もれ・症状詳記チェック」という次の一手、そして経営インパクトへの期待
レセプトデータと電子カルテを繋ぐ、RPAまで見据えた連携構想

──――導入前のユビーに魅力を感じていただいたポイントの一つ「算定もれのチェックに使えそう」ということについて、現在の活用状況はいかがですか?
蛭間氏(情報システム課 課長)
算定もれチェックを行うためのレセプトデータもありますし、電子カルテから診療記録や退院時要約をPDF形式で出力することができるため、それらのデータをユビーに入力すれば、算定もれチェックが自動でできるのではないかと考えました。
カルテから取り出してユビーにかけ、チェックソフトを通したうえで、エラーになったものをRPAで自動処理し、最終的に人のチェックが必要なところだけを確認するような連携イメージを持っています。現在は手作業で行っていますが、いずれはRPAも含めて進めていきたいと考えています。
症状詳記の作成支援としても活用できれば、査定・返戻対応の質とスピードの両方を上げられるのではないかと期待しています。
──――期待していた経営的なメリットは享受できていますか?
蛭間氏(情報システム課 課長)
徐々に皆が使い出して便利さを理解してきています。患者さんと向き合える時間を少しでも増やしたいと考えて導入しましたので、看護師が事務作業以外の時間に充てられるようになればと思っています。
当院は年間休日が129日あり、医療機関の中でもワークライフバランスを重視する職員が入職してきます。業務効率化によって自分の趣味や勉強に充てる時間を作れるのは大きいと考えています。求人広告などでも生成AIを活用して業務効率化を図っている旨をアピールしています。
「AIに仕事を取られる」ではなく「手伝ってもらう」―― 導入検討中の病院へのメッセージ
身近な業務から試すことの大切さと、率直な改善要望
──――今後ユビーの導入を検討している病院へのメッセージをいただけますでしょうか。
蛭間氏(情報システム課 課長)
当初は「AIに仕事を取られてしまうのではないか」と不安に思う職員もいましたが、「仕事を手伝ってもらう」という前向きな気持ちで取り組むのが一番だと思います。
難しく考えず、自分が苦労している身近な業務や効率化しやすいところから試してみるのが良いと思います。AIに手伝ってもらって自分の生活や仕事を楽しむ時間を作ってもらえれば幸いです。
井上氏(医事課)
以前は「残って書類をやらなければいけない」という精神的なプレッシャーを抱えていましたが、現在は「多少溜まっていても後でAIを使って作成すれば大丈夫」と、心理的な負担も大幅に軽減されています。
書類作業が効率化されたことで、その分「他にやりたい医師事務業務」などにしっかりと時間を使えるようになります。
大林氏(医事課)
私自身も生成AIは全くの素人で、使いこなせるか不安でした。しかしシステム課に教わり、私が他の職員に教える形で進めたところ、思ったよりスムーズに導入できました。
プロンプトも自分たちで簡単に修正できるため、AIを活用できている実感があって嬉しくなります。迷っている方も実際に試してみてほしいです。
お話を伺ったのは…
- 蛭間 進 氏法人事務局 次長・事務部 情報システム課 課長
- 熊澤 みどり 氏看護部 外来 師長
- 大林 和美 氏事務部 医事課 課長
- 宇田川 香世 氏事務部 医事課 課長補佐
- 井上 絵美 氏事務部 医事課
- 髙橋 藍 氏看護部 2階病棟
病院紹介
医療法人社団守成会 広瀬病院

神奈川県相模原市に根ざす地域のかかりつけ病院。内科・眼科・整形外科・外科・人工透析内科・緩和ケア内科・漢方内科など幅広い診療科を持ち、在宅訪問診療にも対応している。
- 所在地
- 〒252-0105 神奈川県相模原市緑区久保沢2-3-16
- 設立
- 昭和52年(1977年)9月1日
- 代表者
- 院長 河野 悟
- 病床数
- 71床(一般病床:37床、療養病床:34床)
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